川越グリーンクロス閉鎖の真相と現在|渡し舟の記憶と跡地開発
昭和から平成にかけて首都圏のゴルファーに親しまれ、クラブハウスからコースへ小舟で渡るという風情ある演出で知られた「川越グリーンクロス」。名門パブリックコースとして長年高い稼働率を誇っていた同施設ですが、2019年秋の記録的豪雨以降、突如としてその歴史に幕を下ろしました。熱心な愛好者の間では、いまなお「営業再開の可能性はないのか」「跡地はどうなっているのか」といった疑問や惜しむ声が絶えません。
本稿では、川越グリーンクロスが閉鎖に至った決定的な構造要因、壊滅的被害をもたらした水害の実態、そして2026年現在進行している跡地の大規模な治水インフラ転換の全容を、客観的記録と現地取材データに基づいて徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2019年10月の台風19号による記録的大増水で壊滅的な水没被害を受け、同年12月末をもって営業終了・正式閉鎖となった。
- 要点2:閉鎖の背景には単なる水損だけでなく、国土交通省が進める「荒川第二・第三調節池」の大規模治水事業区域にコース用地が重複していた決定的な構造要因がある。
- 要点3:2026年現在の跡地は首都圏を守る巨大治水インフラへと完全転換されており、ゴルフ場としての復活の可能性は完全にゼロである。
【閉鎖の真相】川越グリーンクロスが営業終了を決断した決定打
川越グリーンクロスの営業終了をめぐっては、被災直後から様々な憶測が飛び交いました。しかし、運営元であった大手ゴルフ場運営会社PGM(パシフィックゴルフマネージメント)が下した最終決断の裏には、不可抗力の自然災害と国家レベルの治水計画という二重の要因が存在していました。
発端となったのは、2019年10月12日に関東地方を直撃した令和元年東日本台風(台風19号)です。荒川流域に未曾有の豪雨が降り注ぎ、荒川河川敷内に位置していた川越グリーンクロスの27ホール(北・中・南コース)は完全に濁流に呑まれました。水位はクラブハウスの床上はおろか、樹木の頭頂部近くにまで達し、コース全体が数メートルにおよぶ泥と流木、汚泥に埋没する壊滅的な水没被害に見舞われたのです。
当時、PGMは当初復旧の可能性を模索したものの、被害総額の甚大さに加え、もうひとつの決定的な壁に直面しました。それが、国土交通省関東地方整備局が進める「荒川第二・第三調節池」整備事業です。コースの立地そのものが、大洪水時に首都圏の壊滅的氾濫を防ぐための遊水地掘削エリアに指定されていたため、河川敷の占用継続や巨額の復旧投資を行う合理性が完全に失われました。結果として、2019年12月31日をもって営業を正式に終了し、半世紀近い歴史に終止符が打たれました。

名物「渡し舟」と27ホールの軌跡|愛された歴史とゴルファーの評判
川越グリーンクロスが他の河川敷ゴルフ場と一線を画し、多くのゴルファーに愛され続けた最大の理由は、名物の「渡し舟(渡し船)」にありました。クラブハウス側で受付と着替えを済ませた後、コースへ出るために荒川の入間川合流点付近の入江を専用の舟に乗って渡るというアプローチは、訪れるプレイヤーに非日常の旅情と独特の高揚感を与えていました。
コース自体はフラットでありながら、北コース・中コース・南コースの計27ホールから構成され、巧妙に配置された池やクリーク、河川敷特有の強風がプレイヤーの戦略性を試す本格的なレイアウトでした。アクセスの面でも、JR川越線・東武東上線の川越駅や西武新宿線の本川越駅からクラブバスが運行されており、都心から車・電車を問わず1時間圏内という抜群の利便性を誇っていました。
当時の利用者の回顧録やレビューには、「舟に揺られながらコースへ向かう数分間で集中力が高まった」「初心者からベテランまで気兼ねなく楽しめる最高のパブリックだった」という声が数多く残されています。リーズナブルなプレー料金とホスピタリティの高い接客も相まって、埼玉を代表する大衆ゴルフ文化の拠点として不動の地位を築いていました。
【データ比較】被災規模と荒川河川敷ゴルフ場の治水リスク検証
河川敷ゴルフ場は常に水害リスクと隣り合わせにありますが、川越グリーンクロスが被った被害と地理的条件は、他のゴルフ場と比較しても際立って過酷なものでした。当時の被害状況と治水事業の位置づけを整理した客観データは以下の通りです。
| 項目 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 施設規模 | 27ホール / パー108(北・中・南) | 河川敷コースは18H以下が主流 | 都心近郊では屈指の収容力と回転率を誇った |
| 台風19号の水没深 | 推定浸水高 約3.5m〜5.0m | 通常の一時冠水は数cm〜1m程度 | コース全域が泥流に覆われ芝生が全滅する規模 |
| 国交省治水事業 | 荒川第二・第三調節池(総事業費数千億円規模) | 通常の河川改修・堤防強化 | 土地利用の優先権が国交省の治水用地に完全移行 |
| 再開・復旧の可否 | 完全閉鎖(2019年12月31日) | 半年〜1年の泥出し後に営業再開 | 事業継続が法論理的・構造的に不可能な状態となった |

噂の真偽を徹底検証|「復活・営業再開説」が完全に消滅した理由
閉鎖後、インターネット掲示板や一部のSNSコミュニティでは「経営母体が変わって再開する」「プレハブの簡易クラブハウスで18ホールのみ営業再開を目指している」といった情報が散発的に書き込まれました。しかし、これらは事実無根の噂に過ぎません。
噂が生じた背景には、被災直後に重機がコース内に入って泥を撤去していた様子が目撃されたことがあります。しかし、この重機作業はゴルフ場を復旧するための工事ではなく、河川法に基づく原状回復工事および国への用地返還に向けた整地作業でした。河川敷の占用許可権を持つ国土交通省との協議において、既に荒川第二調節池の掘削工事計画が確定していたため、民間企業に対してゴルフ場事業の再認可が下りる余地は一切ありませんでした。
公式発表資料および自治体の都市計画関連情報を精査しても、同地でのゴルフ場事業再開に向けた申請や動きは皆無です。「川越グリーンクロスの復活」という言説は、惜しむファンの希望的観測が誤認されて拡散したものであることが証明されています。
【2026年現在の跡地】国土強靭化の大プロジェクト「荒川第二調節池」の現場
2026年現在、川越グリーンクロスが存在していた川越市古谷本郷周辺の河川敷跡地では、国を挙げた「荒川第二調節池」の本格的な掘削・築堤工事が集中的に推進されています。緑鮮やかだったフェアウェイやグリーン、象徴的だった舟着き場の痕跡は完全に姿を消し、広大な重機作業エリアと土砂運搬用ダンプカーが行き交う土木工事現場へと変貌を遂げました。
荒川第二・第三調節池は、さいたま市、川越市、上尾市にまたがる広大な河川敷を掘り下げ、洪水時に荒川本川から最大約5,100万立方メートルの水を一時的に貯留する巨大治水施設です。気候変動に伴うゲリラ豪雨や超大型台風の頻発を受け、下流の東京都心および埼玉県南部を壊滅的洪水から防御するための極めて重要な国家プロジェクトとして位置づけられています。
かつてゴルファーが白球を追い、渡し舟の上で風を感じていた場所は、数百万人の人命と首都圏の都市機能を水害から守る強固なインフラの最前線として、新たな使命を果たしています。

【プロの結論】気候変動と河川敷コースの未来|代替コース選びの基準
川越グリーンクロスの閉鎖と治水施設への転換は、日本の河川敷ゴルフ場が直面する構造的リスクを浮き彫りにしました。地球温暖化に伴う水害の激甚化により、河川管理者は高水敷(河川敷)の利用規制を強化せざるを得ず、民間スポーツ施設よりも治水安全度が最優先される時代に入っています。
川越グリーンクロスの利便性やフラットで歩きやすいプレースタイルを好んでいたゴルファーは、今後のゴルフライフにおいてどのような基準でコースを選ぶべきでしょうか。専門的見地から導き出される明確な判断基準は以下の通りです。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
▼ 丘陵・台地型コースへの移行が適している人
- 突然のクローズや予約キャンセルを避けたい人:冠水リスクのない高台に位置する丘陵コース(埼玉西部・飯能エリアや比企・児玉エリアなど)は、大雨の後でも迅速に営業再開が可能です。
- 本格的なアンジュレーションや戦略性を求める人:河川敷特有のフラットさに物足りなさを感じ始めていたプレイヤーにとっては、高低差を活かしたコースへの切り替えが良いステップアップとなります。
▼ 現存する他の河川敷コースを選択する際の注意点
- 治水事業計画区域外のコースを選ぶ:荒川や利根川水系でプレーを続ける場合は、国交省の大規模遊水地・調節池計画に指定されていないエリアのコース(吉見・大宮・三郷エリアなど)をホームコースに選定することが長期利用の前提となります。
- 台風シーズン(8月〜10月)の予約リスクを織り込む:河川敷コースを利用する際は、冠水時の対応規約や振替予約の柔軟性をあらかじめ確認しておくことがトラブル防止の鉄則です。
【川越 グリーン クロス】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:川越グリーンクロスはなぜ閉鎖されたのですか?
A1:2019年10月の台風19号による壊滅的な水没被害を受けたことと、コース用地が国土交通省の「荒川第二・第三調節池」整備事業の対象区域に指定されていたため、営業再開を断念して2019年12月末で正式に閉鎖されました。
Q2:名物だった「渡し舟」やクラブハウスは現在どうなっていますか?
A2:クラブハウスや舟着き場、渡し舟などの施設・設備は、河川敷の原状回復工事および調節池の掘削工事に伴い、すべて解体・撤去されました。現地に当時の面影は残っていません。
Q3:今後、同じ場所や近隣でゴルフ場として復活する可能性はありますか?
A3:可能性は完全にゼロです。跡地全体が国の治水インフラ(調節池)として大規模に掘削・整備されており、河川管理上、再びゴルフ場としての占用許可が下りることはありません。
Q4:川越グリーンクロスの代わりになる近隣のおすすめコースはありますか?
A4:川越周辺の平坦なアクセス重視であれば「ノーザンカントリークラブ錦ヶ原ゴルフ場」や「大宮国際カントリークラブ」、水害リスクを避けた丘陵コースであれば関越道沿いの「川越カントリークラブ」や「武蔵松山カントリークラブ」などが有力な選択肢となります。
まとめ:名門パブリックの記憶と私たちが受け止めるべき治水の現実
川越グリーンクロスは、渡し舟に揺られてコースへ渡るという情緒豊かな体験とともに、昭和・平成のゴルフブームを支えた伝説的なパブリックコースでした。その喪失は多くのゴルファーにとって深い惜別の念を伴うものでしたが、閉鎖の背景にあったのは、激甚化する気候災害から首都圏の安全を守るという不可欠な社会的要請でした。
2026年現在、同地で進む荒川第二調節池の建設工事は、かつてコースを愛した人々が暮らす街や生活基盤を守るための防波堤となります。名コースの記憶を胸に刻みつつ、現代の気候リスクに対応した新しいゴルフスタイルを選択していくことが、これからのゴルファーに求められています。 (出典: 川越 グリーン クロス(Yahoo!ニュース))